2025年のJ2リーグ戦線で、V・ファーレン長崎の存在感は際立っています。「J1昇格確定か?」という期待の声も高まる中、多くのサッカーファンは「このチームは一体どんなクラブなのか」「過去の昇格挑戦と何が違うのか」という疑問を抱いているのではないでしょうか。
長崎は、2005年の創設会見でユニフォームすらない状態から「ゼロからの挑戦」を掲げ、夢を追い続けてきたクラブです。しかし、2017年の初昇格は短命に終わり、クラブには「J1で定着できない」という苦い経験が残りました。
本記事では、長年クラブを応援してきたサポーターである筆者の視点から、現在の長崎の「本気度」を徹底分析します。単なる戦力紹介ではなく、過去の失敗を乗り越えるためにクラブが講じた「本質的な変化」を深掘りし、さらに強化責任者目線の厳しい課題まで踏み込んで解説します。
この記事を読むことで、長崎がなぜ今年こそ本命なのか、そしてJ1定着に必要な真の要件は何かが明確になるはずです。
V・ファーレン長崎の「平和の物語」と地域との絆
V・ファーレン長崎を語る上で欠かせないのが、そのアイデンティティと地域性です。長崎は江戸時代にただ一つ海外との交流があった「開かれた土地」であり、その先進的で、時に反骨精神に満ちた気質はクラブにも深く根付いています。
サポーターは単なる観戦者ではなく、クラブの理念である「平和の物語」を共に紡ぐ仲間です。スタジアムは地域住民や観光客も交わる「開かれた空間」であり、応援そのものが長崎の文化体験の一部となっています。この「ゼロからの挑戦」と「地域との強い絆」こそが、他のJクラブにはない長崎の最大の独自性であり、土台を支える力となっています。
【独自性分析】過去の昇格挑戦と今の体制を分ける「3つの本質的な変化」
現在の長崎が過去の昇格チームと決定的に異なるのは、その「持続性」を見据えた戦略的な転換です。2017年の初昇格時(高木琢也監督時代)は、選手の結束力と勢い、堅守速攻を軸に短期間で目標を達成しました。しかし、J1定着には至らず、この経験からクラブは「昇格後の持続性」に課題が残ったのです。
現在のチームに見られる「本質的な変化」は以下の3点です。
変化①:指導体制の進化—「勢い」から「組織的サポート」へ
下平隆宏監督体制では、勢い任せのサッカーではなく、戦術的な基盤づくりを重視しています。特に「2セット戦略」と呼ばれる複数の戦術オプションを持つ体制は、長期シーズンを戦い抜く準備の証です。
さらに注目すべきは、専門アドバイザー(メンタル・フィジカル・チームビルディング)を配置した点です。これは過去になかった、選手のコンディションと精神面を支えるための“組織的サポート”であり、長期的なチーム力維持に不可欠な変化と言えます。
変化②:補強戦略の転換—「J2即戦力」から「J1経験値」の獲得へ
2024年に昇格を逃した悔しさから、2025年は明確に「J1で勝てる経験値」を持つ主力級選手を大量補強しました。
- 山口蛍(ヴィッセル神戸元キャプテン)
- エドゥアルド(横浜F・マリノスの守備の要)
- 関口正大(甲府キャプテンDF)
過去の「J2実績選手中心」の補強から脱却し、「J1で戦い、勝ち点をもぎ取れる経験とクオリティ」を最優先した戦略的な投資は、クラブの強い本気度を示しています。
変化③:国際戦略との連動
長崎スタジアムシティ構想という巨大プロジェクトを背景に、海外クラブとのネットワークを活用したブラジル人MFエメルソン獲得など、国際的な補強ルートを開拓。これは「昇格後」のチームを見据えた、クラブの将来性を示す新しい動きです。
メディアがまだ知らない「影のMVP」関口正大の真価
現在の長崎の強さを支えているのは、派手なゴールやアシストだけではありません。筆者が「影のMVP」として評価するのは、DFの関口正大選手です。
彼は甲府時代にキャプテンを務めた経験があり、長崎加入後も対人守備の強さと冷静な判断力で最終ラインを引き締めています。派手さはないが、「相手の攻撃を寸断する小さなプレー」を積み重ね、勝ち点を拾う上で不可欠な安定感を提供しています。豊富な運動量で攻守にわたって上下動を繰り返し、練習から徹底して走り込む献身的な姿勢は、チーム文化を強化する重要な要素です。
これは、鹿島からマインツへステップアップした佐野海舟選手のような「地味でも走り続け、奪い続ける」努力型選手の成功を想起させ、長崎の堅実な強さの象徴と言えます。
J1定着のために今テコ入れすべき2つの課題
J1昇格は通過点であり、真の目標は「J1定着」です。強化責任者目線で考えると、昇格そのものよりも「昇格後に落ちない仕組み」をどう作るかが最大の課題となります。
課題①:戦術面—「J1で通用しない」複数戦術の確立不足
J2では「堅守速攻+個人技」で勝ち点を拾えても、J1では相手の分析力が格段に高まります。現状の長崎には、相手に応じてポゼッションとトランジション(切り替え)を使い分ける柔軟性がまだ不足しています。
【テコ入れ策】:ポゼッション時の「ビルドアップの安定」と、前線の「崩しの型」を確立することが急務です。これがないと、昇格後は得点力不足で苦しむことになります。
課題②:組織面—若手育成とベテランとの「二層構造」構築の必要性
J1では一瞬のズレが失点に直結します。ベテラン補強は有効ですが、彼らの走力・集中力の維持には限界があります。
【テコ入れ策】:経験豊富なベテランが活躍しているうちに、若手のセンターバック(CB)やサイドバック(SB)を計画的に育成し、試合で併用する「二層構造」を確立すべきです。これにより、守備ラインの若返りと競争意識を促し、J1を戦い抜くための持続可能なチーム力を構築できます。
まとめ:「長崎」がスポーツを通じて目指す未来
V・ファーレン長崎の現在の躍進は、過去の失敗を教訓に変え、指導体制と補強戦略に「本質的な変化」をもたらした結果です。
長崎の地には、江戸時代から続く先進性と、厳しい歴史の中で培われた強い反骨精神があります。この土地柄が立ち上げたチームは、まさにその強い気持ちのもと、一丸となって成長を続けています。
V・ファーレン長崎は単なるサッカークラブではなく、地元長崎県に経済的・社会的な「開かれた影響」をもたらすべき存在です。
夢を現実にするのは、いつだって「地道な努力と戦略的な変化」です。現在の長崎は、その両方を持ち合わせています。この覚悟ある本気度をもって、クラブは今、J1という次のステージへの扉を開けようとしているのです。


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