「よし、家庭菜園を始めよう!」そう決めたとき、最初にぶつかる大きな分かれ道があります。それが「種から育てるか、苗を買うか」問題。実はこれ、8年間家庭菜園を続けてきた私にとっても、何度も頭を悩ませてきたテーマです。
種から芽が出る感動、苗から順調に育つ安心感——どちらも捨てがたい魅力があります。でも、数々の失敗と、ある苗との運命的な出会いを経て、私はひとつの答えにたどり着きました。今日はその全部始終を、赤裸々にお話しします。
「0から育てたい!」その情熱が最初の壁になった
家庭菜園を始めたばかりの頃、私は「苗を買うなんて楽をしているみたいで、なんだか違う気がする」と思っていました。種からコツコツ育ててこそ本物、そんな謎のこだわりがあったのです。それに、種なら一袋でたくさんの苗が作れる。まさに一石二鳥……のはずでした。
きゅうり、トマト、ピーマン、絹さや。次々と種をまき、土をかぶせ、水をやり、毎朝ワクワクしながらポットをのぞき込む日々。そして小さな芽がひょっこり顔を出した瞬間の感動は、なんとも言えないものがあります。
種まきに挑戦したのは、きゅうり・トマト・ピーマン・絹さやなど。理由は「0から育てたい」「苗を買うのは少し楽をしている気がした」「種からならたくさん作れる」という思いから。発芽の瞬間は何度経験しても感動する。
まさかの落とし穴「全部育てたくなる」という誘惑
ところが、ここで大きな落とし穴が待っていました。芽が出ないときのために、種は多めにポットへまいておく。これは基本のセオリー通り。
問題はその先でした。ポットのほとんどから無事に芽が出てしまうと、「せっかくこんなに元気に育ったのに……」という気持ちが勝ってしまい、芽が出たポットを結局すべて畑に植えてしまったのです。
ポット単位では間引きをしたつもりでも、畑全体で見れば苗の数が多すぎる状態。株と株の間がぎゅうぎゅうになり、風通しは悪くなるわ、栄養は分散するわで、期待していたほどの収穫にはつながりませんでした。
種まきの本当の関門は「芽を間引く勇気」だけでなく、「元気に育ったポットを、それでも減らす勇気」だったのです。
芽が出ないときのために種は多めにポットで育てていたため、ポット内の間引きはしていた。ただ、芽が出たポットの数が多く、そのすべてを畑に植えてしまったため株間が狭くなり風通しが悪化。栄養も分散し、収穫量は伸び悩んだ。
間引きの本番は「発芽直後」ではなく「定植前」。ポット単位で間引いたつもりでも、畑全体で見て株間が十分か、もう一段階チェックする必要がある。
植え替え直後の悲劇、そして「実がならない」問題
間引きをクリアしても、種まきにはまだ試練が待っていました。それが「虫」と「種の良し悪し」です。
まず直まきの場合、発芽したばかりの柔らかい芽は虫にとって格好のごちそう。あっという間に食べられてしまうことが何度もありました。だったら茎がしっかりするまでポットで育てよう、と思っても、今度は大きめのポットとそれなりのスペースが必要になります。
発芽したばかりの柔らかい芽は虫にとって格好のごちそう。特にダンゴムシとネキリムシが大好物。
そして何より辛いのが、ポットである程度大きく育てて「よし、これなら大丈夫」と庭に植え替えた直後に、あっという間にかじられてしまったとき。ここまでの手間を思うと、ショックの大きさは・・・。
さらにやっかいなのが、無事に育っても実がなるとは限らない、という現実です。以前、知り合いから種をもらったことがありました。絹さやは4つ芽が出て植え替えたのですが、そのうち3つが虫に食べられ、残る1つも病気で枯れてしまいました。
同じくもらったミニトマトの種は4つとも順調に苗になり、株自体は立派に大きく育ちました。ところが実がついたのは最初のうちだけ。その後はぱったりと実がつかなくなり、あとは株だけがひたすら大きくなっている状態です。
種から育てる道のりは、発芽というスタートラインに立ってからも、まだまだ油断ができないのです。


絹さやは合計で5つ収穫はできましたが、そのあとはうどん粉病になって、枯れてしまいました。
知り合いからもらった種で挑戦した絹さやは、芽が4つ出て植え替えたが3つが虫に食べられ、残り1つも病気で枯れてしまった。同じくもらった種のミニトマトは4つとも苗になり株は大きく育ったが、実がついたのは最初だけで、その後は続かず株だけが大きくなっている。
もらった種や由来のわからない種は、発芽率・耐病性にばらつきが出やすい。あと、種は一袋でたくさん入っているので、余ってしまう。2年くらいは同じ種でもいけるが、3年目は芽がでなくなるものも多い。
「それなら苗を買えばいい」——でも試練は続く
「種がダメなら苗にしよう」。そう考えて近所のホームセンターできゅうりの苗を購入したこともあります。ですが、これもまたうまくいきませんでした。原因は植えた時期が遅すぎた。最近の夏の気温上昇の影響もあってか、8月にはほとんど枯れてしまったのです。
さらに我が家では毎年にんにくを育てていて、その収穫時期が5月中旬〜6月頃。にんにくを収穫し終えてから夏野菜の苗を植えようとすると、どうしても植え付けが遅れてしまう……という悩みもありました。「苗を買えば安心」という単純な話ではなかったのです。
ホームセンターで購入したきゅうりの苗は、夏の気温上昇の影響もあってか8月にはほとんど枯れてしまった。にんにくの収穫(5月中旬〜6月)後に植えると、どうしても植え付け時期が遅れる悩みもあった。
運命の出会い、「JAいるま野」の苗
そんな試行錯誤を重ねていたある日、知り合いから思いがけないプレゼントをもらいました。それが「JAいるま野 アグレッシュ日高中央」で購入したきゅうりの苗です。
半信半疑で植えてみたところ——これが驚くほど元気だったのです。子づるがどんどん伸び、6月初旬から8月まで、なんと約3ヶ月にわたって収穫を楽しめました。
あまりの勢いに、たくさん収穫しすぎて株が弱ってしまいそうになったので、適度に摘心をしながら調整。すると毎日少しずつ、長期間にわたってきゅうりのある食卓を楽しめたのです。
このとき初めて、「苗はどこで買っても同じじゃない。苗づくりが上手な農家がちゃんと存在するんだ」と実感しました。
知り合いからもらった「JAいるま野 アグレッシュ日高中央」のきゅうり苗は、6月初旬〜8月まで約3ヶ月収穫できた。子づるが元気に伸び、収穫しすぎによる株の消耗を防ぐため適度に摘心。苗の質の違いを実感した瞬間だった。苗にも良しあしが存在するんですね。
苗選びで失敗しないためには「どこで買うか」だけでなく「いつ植えるか」も同じくらい大事。栽培スケジュール(にんにくの収穫時期など)を先に決めてから、苗を植える時期を逆算すべきだった。
良い苗の見分け方、3つのサイン
この経験のおかげで、苗選びで見るべきポイントが自分の中でクリアになりました。農協の直売所に並ぶ苗を選ぶときは、ぜひこの3つをチェックしてみてください。
✅ ポイント:良い苗の見分け方
- 葉っぱがしっかりしているか
- 葉の色が青々としているか
- 茎がしっかりしているか
この3点を意識するようになってから、苗選びで「失敗した……」と感じることがぐっと減りました。
苗が向く野菜、種まきが向く野菜
すべての野菜が苗向き、というわけではありません。私自身の経験から、次のように使い分けています。
✅苗で育てている野菜
- きゅうり
- ミニトマト
- なす
- ピーマン
✅種まきがおすすめの野菜※特に葉物
- ラディッシュ
- ホウレンソウ
- サニーレタス
- オクラ
特にオクラは種まき初心者の強い味方です。原産地のナイル川流域は乾燥した環境で、密集して育つ性質を持っているため、間引きの必要がほとんどありません。さすがに密集しすぎた場合は1つのポット内を3本くらいに調整します。
「間引きがもったいない・・・」という方には、まずオクラの種まきから試してみることをおすすめします。しかも、出た芽全部植えて、株間もそんなに気にしなくて良いんです!
オクラはどちらかというと縦に伸びていく野菜だからそんなにスペースも必要ないし、なんならプランターでも育てやすい野菜です。
まとめ:まずは地元農協の苗をのぞいてみよう
| 比較軸 | 苗 | 種 |
|---|---|---|
| 発芽・初期の手間 | 少ない(すでに発芽済み) | 虫害・間引きなど管理が必要 |
| 収穫までのスピード | 早い | 遅い(発芽〜定植の期間が必要) |
| コスト | やや高め | 安い(一袋で多数作れる) |
| 品質のばらつき | 農家次第で差が出る(良い苗との出会いが鍵) | 発芽率・生育に運の要素が大きい |
| 育てる楽しさ・達成感 | 定植〜収穫の過程を楽しめる | 発芽の感動を味わえる |
私は苗派だけど、間引き不要なオクラや葉物は種まきをしています。ラディッシュ、ほうれんそうはすぐ育つのでおすすめです。
種から育てる達成感は、何ものにも代えがたい魅力があります。でも、間引きの勇気や気候の変化への対応など、初心者にとってのハードルも確かに存在します。
私自身の失敗と、あの日出会ったJAの苗が教えてくれたのは、「実物野菜は、地元の気候を知り尽くした農家がつくった苗から始めるのが一番の近道」ということでした。一方で、間引きの心配が少ないオクラや葉野菜は、種まきから挑戦するのもおすすめです。
これから家庭菜園を始める方は、ぜひ一度、地元の農協の直売所をのぞいてみてください。きっとそこに、あなたの家庭菜園を支えてくれる、とびきり元気な苗との出会いが待っています。


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