【この記事は、現場指導と家庭サポート歴20年超のHIRO★BUが「本当に現場で役立った/悩んだ/救われた」体験だけで書いています。】
サッカーは、戦術とポジショニングが日々進化するダイナミックなスポーツです。中でも「サイドバック」というポジションは、かつては“守備の裏方”とされていましたが、今では攻撃の起点として、試合の流れを左右するほどの重要な役割を担うようになりました。
私がその変化を肌で感じたのは、埼玉県の中学校でサッカー部の外部コーチをしていたときのこと。3年生の公式戦を目前に控えたある日、右サイドバックの佐藤くんが、相手チームの徹底マークに苦しみ、思うように動けなくなってしまったのです。
「どうしても前に出られない」「自分がボールを持つと、すぐに囲まれてしまう」——試合後、悔しさをにじませながら話す彼の姿に、私は胸が締めつけられました。その夜、彼はお父さんと一緒に試合の映像を見返し、「どうすればもっと貢献できるのか」を真剣に考えていたそうです。
翌日の練習では、彼と一緒に“中に絞ってボール回しに関わる動き”を繰り返し確認しました。最初は戸惑いもありましたが、少しずつ「攻撃に関わる楽しさ」を感じ始めた彼は、次第に表情が変わり、プレーにも自信がにじみ出るようになっていきました。
そして迎えた公式戦。私は彼に中央寄りのポジションを取らせ、展開の起点となるよう指示。彼の判断力と展開力が光り、チームは見事に逆転勝利を収めました。ベンチの控え選手や保護者からは、「サイドの佐藤くんがまるで司令塔だった」と驚きと称賛の声が上がったのを、今でも鮮明に覚えています。
この経験を通じて私は、「ただ走るサイドバック」ではなく、「流れをつくるサイドバック」の可能性に気づかされました。本記事では、こうした現場の葛藤や成長のドラマ、そして戦術的な視点を交えながら、現代サイドバックの進化を深掘りしていきます。

今の時代、サイドバックは“縁の下の力持ち”ではなく、試合の流れを握る要のポジションになってきました。展開を読む力、そして勇気ある一歩が求められる。佐藤くんのような選手が現れるのは、本当に指導者冥利に尽きましたね。
現代サッカーに見るサイドバック進化の背景
昔のサイドバックに求められた守備専門の役割とは
かつてのサイドバックは、主に守備に徹する“縁の下の力持ち”のような存在でした。私が埼玉県の中学校で外部コーチをしていた頃、3年生の田中くんもまさにその典型でした。足が速く、守備範囲が広いという理由で右サイドバックを任されていた彼は、日々の練習でも真面目に取り組み、誰よりも走っていました。
しかし、戦術的な指示はといえば、「ウイングを止めろ」「サイドを突破させるな」といった単調なものばかり。ある市内大会の決勝戦では、相手の左ウイングに押し込まれ、田中くんは試合のほとんどを自陣深くで耐えるだけの時間に費やしました。
試合後、ベンチに戻ってきた彼は、静かにこう漏らしました。
「せっかくの決勝だったのに、ただ守ってるだけで…何もできなかった」
その言葉に、私は返す言葉を失いました。ご両親も「運動量は誰よりもあったのに、全然目立てなかったね」と悔しそうに話していたのが印象的で、特にお母さんは「本人もずっと“何のために走ってるんだろう”って言ってて…」と、胸の内を明かしてくれました。
その夜、田中くんは自宅で試合の映像を見返しながら、「もっと攻撃に関われたら、違ったのかな」とつぶやいたそうです。お父さんが「じゃあ、次はどう動けばいいか一緒に考えてみよう」と声をかけてくれたと、後日ご家族から聞きました。
この出来事をきっかけに、私は「サイドバックはもっと自由であるべきではないか?」と強く感じました。相手に押し込まれたときこそ、彼のような走力や体力を活かして、攻撃の起点になれるのではないか。そう考え、次の練習からは「中へ絞る動き」や「ボールを受けて前を向く動き」を一緒に練習し始めました。
最初は戸惑いもありましたが、少しずつ「自分が攻撃に関わっていいんだ」と感じ始めた彼は、次第に表情が変わり、プレーにも積極性が生まれていきました。守備一辺倒だった役割を見直すことが、彼のプレーの幅と自信を育てる第一歩になったのです。
- 選手の強みを戦術に活かす工夫が必要
足の速さやスタミナといった個々の特性を、単なる守備ではなく攻撃展開の起点として応用できるように設計することで、よりダイナミックな試合展開を実現できる。 - 選手の挫折や悔しさこそ次の成長の糧になる
試合後の悔しさや自己評価をきっかけに、戦術的な役割や指導法を見直すことができ、指導者・選手双方にとって貴重な学びの機会となる。
攻撃参加するSBがチームにもたらす戦術的価値
現代サッカーでは、サイドバックがビルドアップの段階から攻撃に深く関与する動きが注目されています。タッチラインを駆け上がるだけでなく、ゴール付近への切り込みやフィニッシュへの関与が求められる時代です。
所沢市で行われた県大会にむけての練習試合。中盤の支配はできているものの、なかなか得点に結びつかない試合展開が続いていました。そんな中、私は右サイドバックの鈴木くんに「フィニッシュの予測をして、ゴール付近の動きにもっと絡んでみて」と声をかけました。
彼にとっては初めての挑戦でした。これまで「守備とサイドの上下動」が自分の役割だと思い込んでいた彼は、「ゴール前に絡むなんて、自分にできるんだろうか…」と不安を口にしていました。ご両親も「急に攻撃参加って言われても、本人は戸惑ってるみたいです」と心配されていました。
そこで、練習では“フィニッシュゾーンの読み方”や“ゴール前での動き方”を動画で一緒に分析しながら、少しずつ成功体験を積ませていきました。最初はタイミングが合わず、クロスが空振りになったり、ポジションが被ったりと失敗も多くありましたが、彼は「今のは惜しかった!次はもっと早く動いてみる」と前向きに取り組み続けました。
そして迎えた県大会当日。センターライン付近でチームメイトとの連携からフィニッシュゾーンを見極めた鈴木くんは、相手ディフェンスの隙間をついてサイドからえぐるようにゴールエリア内へ侵入。彼のクロスは絶妙なタイミングで合わせられ、決定的なヘディングシュートが生まれました。
ベンチの選手たちが歓喜し、観客席の保護者からも大きな拍手が湧き上がる中、鈴木くんは照れくさそうに笑っていました。試合後、「最初は怖かったけど、攻撃に関わるのってこんなに楽しいんですね」と話してくれた彼の表情は、以前とはまるで別人のようでした。
この試合を通じて、私は改めてサイドバックの視野と柔軟性の重要性を実感しました。タッチラインを駆け上がるだけでなく、広範囲の視点でフィニッシュを予測し、的確なタイミングで切り込むことで、攻撃にダイナミズムが生まれる。鈴木くんの挑戦は、チームの戦術的な幅を広げただけでなく、彼自身の成長にもつながったのです。
- 広い視野で攻撃を見極める力が重要: サイドバックは、タッチラインを駆け上がるだけでなく、フィニッシュを予測してゴール付近に絡む柔軟な動きが求められる。
- 状況対応力でプレーを広げる: 相手守備の隙をつき、攻撃に絡む動きが選手のスキルを向上させる。
- 柔軟なポジショニングが戦術を革新: 固定された役割を超えた判断力が、局面の突破と数的優位を生む。
柔軟なサイドバックが試合を動かす時代へ
ペップ・グアルディオラ監督によって注目された「インバーテッド・フルバック」の戦術は、今や多くのチームで導入され、サイドバックの役割は大きく進化しています。しかし、その進化は「中に入る」動きだけにとどまりません。状況に応じて、広い視野と柔軟な判断力を持つことが、現代のサイドバックには求められています。
埼玉県狭山市での練習試合。当時、左サイドバックを務めていた斉藤くんはキャプテンでもあり、技術力は高いものの、緊張しやすくプレッシャー下では判断ミスが出やすいという課題を抱えていました。
その試合では、相手の守備が堅く、なかなか攻撃の糸口がつかめない展開に。焦りからか、斉藤くんも無理なパスを連発し、前半は思うようなプレーができませんでした。ベンチに戻ってきた彼は、顔を伏せながら「自分がキャプテンなのに、何もできてない…」とつぶやきました。
その姿を見ていたお母さんは、「最近、責任を感じすぎてるみたいで…」と心配そうに話してくれました。ご家庭でも「もっと落ち着いてやればいいのに」と声をかけていたそうですが、本人は「キャプテンだから頑張らなきゃ」と自分を追い込んでいたようです。
ハーフタイム、私は彼にこう声をかけました。
「斉藤、サイドから全体を見渡してごらん。焦らず、攻撃の起点をつくる意識でいこう。ゴール前だけじゃなく、逆サイドへの展開も狙ってみよう」
最初は不安そうな表情でしたが、後半が始まると彼は徐々に落ち着きを取り戻し、中央のミッドフィルダーへの正確なパスや、逆サイドへのロングボールを通して、攻撃の起点としての役割を果たし始めました。
そして試合終盤、彼のロングボールが右ウィングに届き、そこからゴールにつながるクロスが生まれた瞬間、観客席から大きな拍手が湧き上がりました。試合後、斉藤くんは「最初は焦ってたけど、全体を見渡すことを意識したらすごく楽になった」と、晴れやかな表情で話してくれました。
この経験を通じて、彼は「自分が全部やらなきゃ」と背負い込むのではなく、「全体を見て、つなぐ役割」に自信を持てるようになりました。その変化は、彼自身だけでなく、チーム全体の落ち着きや連携にも良い影響を与えてくれたのです。
- 視野の広さが攻撃の起点を生む: サイドバックが全体を把握し、中央や逆サイドへの展開を意識することで、試合の流れを変える力を持つ。
- 冷静さが判断力を高める: 焦りを克服し、落ち着いてプレーすることで、精度の高いパスや的確な展開が可能になる。
漫画『アオアシ』から見るサイドバックの重要性
サッカーをしている人なら誰しもが知っている『アオアシ』。主人公の青井葦人は、フォワードからサイドバックにポジションを変えたことで、チームに新しい力をもたらしました。もともと持っていた「広い視野(俯瞰)」の力を活かし、守備だけでなく攻撃のスタート地点として活躍しています。
ピッチ全体を見渡しながら、味方の動きや相手の位置をすばやく判断し、正確なパスでチャンスを作ります。また、守備では1対1の対応力が上がり、前線への走り込みやクロスも積極的に行えるようになりました。監督の戦術を理解し、仲間に声をかけて連携を深める力も身につけ、チーム全体の動きを支える存在になっています。
葦人の成長は、サイドバックというポジションの可能性を広げる大きな一歩となっています。
はたして、ただの漫画だけの話でしょうか?
2025年11月10日(月) 17:23更新時点のJリーグのサイトから得点数などを割り出してみると下記の表がつくることができます。

この表を見る限りですと、もう守備だけが役割ではないことがわかります。
サイドバックが積極的に攻撃に参加することで前線での数的有利な状況を作り出したり、相手守備を誘い出し、スペースを作ったりと戦術の幅が広がります。もし、あなたがサイドバックならどうプレーする?
まとめ
サイドバックは、かつて守備の裏方として見られていたポジションでしたが、今や戦術の中心を担う存在へと進化しています。実際の現場では、選手の特性や気づき、そして指導の工夫によって、その役割は大きく広がってきました。体力だけでなく、展開を読む力や柔軟なポジショニング、中盤に迫るような判断力が求められる時代です。
経験を通じて見えてきたのは、「ただ走るサイドバック」ではなく、「流れをつくるサイドバック」の重要性でした。一人の選手の挑戦がチーム全体の戦術を変えることができる。そんな可能性に満ちたポジションだからこそ、今後の育成や指導においても、視野と意識の高いサイドバックの育成が鍵となるでしょう。
このページは、“現場で何度も壁にぶつかり、子どもや家族と一緒に悩みながら乗り越えた”からこそ書けた本音記事です。
「同じ悩みでふさぎ込んだ方も、必ず前に進めます」-そんな“救い”や“きっかけ”づくりとして役立つことを願っています。


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