サッカーにおける1対1の技術は、すべての年代で重要な基礎スキルです。特に小学生低学年の指導では、このスキルが選手の成長につながる大きな鍵となります。例えば、ある練習中、「相手に勝てない…」と悩んでいた子どもがいました。
しかし、フェイントやタイミングを工夫することで、その子は次第に自信を取り戻し、試合で活躍する姿が見られるようになりました。本記事では、このような成功体験を生むための具体的な練習メニューをご紹介します。
初心者コーチ向けの指導基本は、指導の心構えを参考にしてください。
コーンを使った鬼ごっこ練習
この練習では、コーンを利用して小さなフィールドを作り、その中で鬼ごっこ形式の1対1を行います。鬼役と逃げる役が交互に役割を変えながら進めることで、瞬時の判断力や方向転換能力が鍛えられます。
また、ボールなしから始めることで基礎動作に集中し、その後ドリブルを加えることで実践的なスキルへと移行できます。
コーンを使った鬼ごっこ:やり方
- コーンを2つ置き、その周囲をフィールドとする。
- 鬼役を決めて、タッチされたら役を交代。
- 足の速さによる不公平が出る場合は、コーンの間隔を広げるなど調整。
- 初めはボールなしで行い、慣れてきたらドリブルを加える。


練習中に「右にフェイントして左に行ってみよう!」や「次はスピードよりタイミングを意識してみよう!」など、具体的な声掛けを行いましょう。また、「惜しい!でも次はもっと工夫してみて!」とポジティブなフィードバックを加えることで、子どもたちの自信とモチベーションが向上します。
「動きの工夫」が大切だと子どもたちに意識させましょう。例えば、「相手をよく観察して、急に動きを変えたら追いつけないよ」と教えることで、子どもたちは反応速度の向上を楽しみながら鍛えられます。
また、コーンの配置やフィールドの広さを自由に調整できるので、どの子も平等に挑戦できる環境を作ることがポイントです。鬼ごっこの形式は楽しさを維持しつつ、判断力や方向転換能力を鍛えられる最高の練習法です。
練習中、足が遅いことを気にしていた子が「僕、いつもタッチされちゃう!」と悔しがっていました。そこで、「逃げるときに急に向きを変えてみよう!」とアドバイスをしたところ、その子は試合中に「フェイント」を使って逃げ切ることができました。
次第に笑顔が増え、「速くなくても勝てるんだ!」と自信を持ち始めました。このような練習を続けることで、すべての子どもたちが自己の工夫に気付ける環境が生まれました。
子どもたちが楽しむ練習アイデアは、全体練習メニューをご参考ください。
コーン間を抜けるデュエル
この練習では、守備側がコーン間のみで動ける制約があるため、攻撃側は相手の動きを読む力と突破する工夫が求められます。例えば、ある日の練習で、一人の子どもが「どうしても抜けられない」と悩んでいました。
その際、「少し後ろからスタートしてみよう」とアドバイスすると、その子は急な方向転換で突破に成功しました。この成功体験が競争心を刺激し、グループ全体の集中力が向上しました。
1対1 空いているところをドリブル通過
- コーンを2つ置いて鬼役はそのコーンの間しか動けない
- 抜くほうはボールをドリブルして、鬼が守るコーンの間のどこからでも良いので通過する
- 何か所かで行うと並んでだれることもない。
- 慣れてきたら下の2個目の図にあるように、鬼役を何人か配置する
まずは、1人対1人で行いましょう。3~4人を1グループにして行うと良いでしょう。

ある程度慣れてきたら、鬼役(守り役)を増やしてみましょう。
抜くほうは3人目まで抜いてやる!守るほうはぼく(私)が全員とめてやる!と夢中になります。

コーンの間は、狭いとなかなか通過できないので、最初は広めにしましょう。そこは、レベルに合わせて調整してみてください。
この練習では「相手の動きを予測する」ことが重要です。攻撃側には「相手がどちらに動きそうかを考えてからスタートしよう」と意識させると、プレーに深みが増します。
また、守備側にも「攻撃役の視線や足の動きに注目しよう」と指示を出すことで、攻守双方が緊張感を持って取り組める環境を作れます。
身体を使ったボールキープ
サッカーでは身体接触への対応力が重要です。この練習では、自分と相手との間に身体を入れる感覚やボール保持能力を養います。例えば、小柄な選手が大きな相手との練習で「絶対勝てない」と不安げでした。
しかし、「足元近くで身体を入れるんだよ」とアドバイスすると、その子は次第にボール保持時間を伸ばし、自信につながりました。このような経験から体幹強化だけでなく精神的な成長も促されます。
身体を入れあう1対1
- ボールキープ役とボールを奪う役で別れる
- ボールは触らないがキープ役が保持できる位置で練習スタート
- ボール奪う役とボールの間にしっかり身体をいれてボールを保持する
- ボールに触れたら攻守を交代する
- これを1~2分間で交代交代で行う
子どもたちには「体が小さくても上手に身体を使えば相手からボールを守れる」ということを具体例を交えながら伝えましょう。「足でボールを触らずに身体だけを使ってボールを守ってみよう」といった課題を設定することで、自然と重心の安定や体幹の強さを鍛えることができます。
また、最初は同じ体格の子とペアにして、慣れてきたら体の大きな子や異なるスキルレベルの子と対戦させると、より実践的な力が身につきます。
体幹の強化練習については、フィールドパフォーマンスをご覧ください。
ゴール付き1対1トレーニング
この練習ではゴールへの意識と球際での強さが同時に鍛えられます。選手同士がボール奪取からゴールまで一連の流れで競い合うことで、攻守切り替え時のスピード感や状況判断力が磨かれます。また、『どんな工夫で次は勝てるか』という振り返り時間を設けることで、自発的に戦術理解が深まります。
「ゴール」付き1対1デュエルトレーニング:やり方
- ゴールを小さく設定し、プレーヤー同士が向かい合ってスタート。
- ボールを転がして「よーいドン!」でスタートする。
- ボールを奪い合い、ゴールを目指す。
アレンジ・レベルアップ方法
こぼれ球や、浮き球から生じる1対1を想定して行う練習です。アレンジしていけば、やり方は無限にあります。

練習の最後に、「どんな工夫をしたら次に勝てるか?」と選手同士で短く話し合わせる時間を設けるのもおすすめです。これにより、子どもたちが自発的に戦術を考える姿勢が身につきます。
ある練習中、自由な1対1を行った際、子どもたちが次々とユニークなアイデアを試していました。一人の子が「ボールを一度相手の足元にわざと転がしてから取る」といったトリックプレーを披露しました。
その技が成功すると周りの子も「次はこんな方法でやってみよう!」と刺激を受け、新しいプレーを試す姿が次々と見られました。この自由な環境が、選手たちの創造性とやる気を飛躍的に引き出してくれました。
フリースタイルデュエルでは「成功したプレーには拍手を送る」といったルールを追加してみましょう。これにより、子どもたちは安心して自分のアイデアを試せるようになります。また、「次は違う技を試してみよう!」と声をかけることで、自主性をさらに引き出すことができます。
自由に挑戦!1対1練習
フリースタイルデュエルは制限なく自由にプレーできるため、選手自身が創造性や自主性を発揮できる練習です。この形式では、自分自身の得意技や戦術アイデアを試すことができ、成功体験によって自信形成にもつながります。また、自由度が高い分、多様なプレースタイルへの適応力も養われます。
フリースタイルデュエル:やり方
- コートの任意の場所にゴール(コーンや線を利用)を設定。
- 対戦者は自由に動いてボールを奪い合い、ゴールを目指す。
- 特定の制限をあえて設けず、戦術・動き・タイミングを選手に任せる。

この練習では、「好きな技を使ってもOK」「勝利後はガッツポーズを取ろう!」といったユニークなルールを追加することで、楽しさとモチベーションをさらに高められます。
1対1練習のまとめ
この練習メニューを通じて、子どもたち一人ひとりが工夫や挑戦を楽しみ、小さな成功体験を積み重ねていく姿は、初心者コーチの皆さんにとっても大きな喜びとなるはずです。
「できなかったことができるようになる」その瞬間が、子どもたちの笑顔と未来を輝かせます。1対1の練習を重ねる中で、技術だけでなく、勝負に向かう心の強さやサッカーの楽しさを深く学んでいきましょう。

今日の1対1の練習、どうだった?相手の逆を取るときに、フェイントをすごく工夫してたね!途中からタイミングを変えて、動きがもっとスムーズになったよ。

ありがとう!最初はなんとなく動いてたけど、コーチが『右にフェイントして左に行ってみよう』って言ってくれたから、それをやってみたんだ。タイミングを変えてみたら、相手をもっとかわしやすくなった気がする!

その工夫は本当に良かったよ!タイミングがすごく良くなったね。次は、もう少しボールを体に近づけてコントロールしてみると、さらに抜きやすくなるよ。最後のゴール、めちゃくちゃかっこよかったね!
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